Vol.165 能登半島地震で志賀原発はどうなった?ふたりの専門家に聞く。

ゲスト: <前半> 小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)*電話インタビュー <後半> 森重晴雄さん(原子核工学研究者)

1月1日に発生した能登半島地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。北陸地方に甚大な被害が及んでいますが、道路やライフラインの損壊の影響もあって、未だ被害の全容は明らかになっていない中、救援・支援の手も十分にまわってはいません。その中、大きな心配事のひとつに「志賀原発」の被害状況があります。今のところ原子力規制庁の発表では、深刻な被害はなく、放射線管理区域外への放射能の漏洩はないとしていますが、それは本当でしょうか?私たちはこれまでの経験から、なかなかタイムリーに正しい情報を発信しない政府や電力会社、大手メディアを何度も見ています。そこでこの番組では、ふたりの原子力の専門家にお話を独自に伺うことにしました。

まず前半では、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんにお電話をおつなぎします。そして後半では、原子核工学の研究者であり、三菱重工在籍中に四国電力・伊方原発3号機の建設に携わったことから原子炉の耐震設計にたいへんお詳しい、森重晴雄さんをお迎えします。

まずは報道されている被害状況について、1.2号機の変圧器の油漏れによる影響はどの程度なのか?使用済燃料プールから冷却水が、420リットル漏れたというが大丈夫なのか?これらについては、発表内容が正確ならば、このこと自体の影響については、今のところ大きな心配はないと小出さんはおっしゃいました。ただその油漏れによる火災が発生しなかったのは不幸中の幸いだったと言います。

そして何より、おふたりの専門家が口をそろえておっしゃることは、本当に原子炉が停止中でよかった、ということ。もし稼働中であれば、大惨事になっていた可能性も否定できないとのこと。今回の地震は、直下型であり、その最も揺れた震度7(2,826ガル)の地点が、まさに志賀原発が立地する志賀町で、それは原子炉の耐震基準の実に6~7倍の加速度だったと言います。その地点から志賀原発までは、わずか12キロ。原子炉1号機建屋地下2階では、399ガルを記録したとされています。原子炉自体の被災状況については、未だ明らかにされていませんが、これだけ大きな揺れであれば、原子炉に相当のダメージがあったと考えるのが自然だと森重さんはおっしゃいます。ましてや、2007年に震度6弱を記録して以来、頻繁に揺れているこの地域では、その都度相当の影響を受けてきているはずだと森重さんは見ています。そこに来て今回の震度7でなのです。

前述のように、今回は、3.11福島第一原発事故を受けて停止中であったのが幸いしたのですが、ここには活断層はないとした北陸電力の調査報告を原子力規制委員会が認めていて、再稼働の準備を進める状況にあったといいますから、本当に恐ろしいことです。今回津波被害も発生しました。日本の海岸には多くの原発があり、高浜原発など現に稼働中のものもあります。福島の教訓は一体何だったのでしょうか?もう本当に思い知るべきです。今すぐすべての原発を廃炉にすべきなのです。

そして森重さんによれば、発災翌日1月2日に発表された気象庁の震源についての詳細データが、1月3日には消えて報道されなくなったと言います。それは志賀原発直下という都合の悪い現実を覆い隠すため、何らかの圧力が経産省あたりからあったのではないかとおっしゃいます。「原発はどんどんと儲かる打ち出の小槌」として財界を中心とする原発推進派は、本当に人の命より金儲けのことしか考えていないのだと、小出さんも呆れておられます。

私たち「路上のラジオ」は、もともと福島第一原発事故で捻じ曲げられた報道に抗議して、小出裕章さんをはじめ真実を発信する方々とともに、立ち上がったジャーナリストや放送人が作った番組(たね蒔きジャーナル~ラジオ・フォーラム)が起源です。ひとの尊い命、そして特に地域に生きる人々の暮らしを無残に壊滅させる原発をすべて廃炉にするために、引き続き声をあげて参ります。この第165回・志賀原発の特集は、ぜひ多くの方に拡散していただければと思います。どうぞよろしくお願い致します。

00:03 前枠 TM~
03:45 前半 小出裕章さん Jingle~
18:08 後半 森重晴雄さん Jingle~
55:37 後枠 ETM~
57:17 アナ尻
60:00 曲尻

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